M 様投稿作品








3月16日。

わたしの誕生日です。

以前はそれほど気にしてもいませんでしたが、今では毎年楽しみにしています。

だって、ご主人様を一番近くに感じられる日ですから。





 Very Happy Birthday





チュンチュン・・・チチチ・・・・・・

晴れ渡った青空に、小鳥のさえずりが響きます。

今日はとってもいいお天気。

なんだかどこまでも飛んでいけそうな気分です。

きっと神様からのバースデイプレゼントですね。

普段は空の上からご主人様たちを見守っていますが、今日だけは特別です。

わたしは、わたしが眠る場所でご主人様たちが来るのを待っています。

と言っても、実はつい先日も来てくださったのですが。

でもやっぱり、あの日とは違います。

今日はとってもウキウキしてしまいます。

ああ、早く来ないかなぁ・・・・・・

何気なく見上げた空には、お日様が輝いています。

あの時、ご主人様と見たお月様はとてもキレイでしたが、

お日様もお月様に負けず劣らず、温かく力強く地上を照らしています。

そよそよと吹きぬける風がとても気持ちいいです。

そう言えば、わたしはもう体はないのに、

お日様の温かさや風の心地よさを感じられるというのは、なんだかとっても不思議ですね。

しばらく穏やかな風に髪を遊ばせます。

こうして一人、ご主人様を待っていると、あの頃を思い出します。

学校の廊下でご主人様を待っていたあの頃を。

人気のない廊下でご主人様がやってくるのを、今か今かと待ち続けた毎日。

ご主人様と挨拶を交わせる喜び。

ご主人様に頭を撫でてもらえる時の嬉しさ。

今でも鮮明に思い出せます。

もう言葉を交わすことも、触れ合うことも出来ないのは悲しいですが・・・・・・

でも、それはわがままというものです。

わたしはご主人様からたくさん大切なものをいただきました。

こうして胸に手を当てると、温かい想いがたくさん溢れてきます。

このかけがえのない想いがあれば、わたしは充分です・・・・・・










少しずつ、ほんの少しずつ影が角度を変え、時間の流れを感じさせます。

すでにお日様はほぼ真上に達しています。

まだかな?

絶対に来てくれるとわかっていても、少しだけ寂しくなってきてしまいます。

ヒュウ・・・・・・

突然強い風が吹き抜けました。

サワサワと梢が揺らめき、カタカタと卒塔婆が乾いた音を立てます。

賑やかながらも物悲しい風景に、わたしの心に切なさが溢れてきます。

ご主人様・・・早く会いたいです・・・・・・

そう、強く思った時でした。

うつむかせてしまっていた視界のすみに、わずかに動くものを捉えました。

ハッとして顔を上げれば、そこにはご主人様たちが。

思わず顔がほころんでしまいます。

花束を持ったご主人様、水桶を持った御堂さん、

後ろにはひなたちゃんととばりさんと美和さん。

みなさん、今日も楽しげに談笑しています。

程なくして、みなさんがわたしのお墓に到着されました。

いらっしゃいませ。

聞こえていないとわかっていても、つい口に出してしまいますね。

みなさんそれぞれに、わたしにお祝いの言葉をかけてくれます。

ありがとうございます。本当に嬉しいです。

ご主人様の手によって墓石が磨かれ、お花は美和さんが飾ってくれました。

やはりキレイになると気持ちがいいですね。

自分でお手入れできたなら、みなさんを心置きなくお迎えすることができるのですが・・・

とても残念です。

線香立ての中を掃除し終えた御堂さんが、お線香に火をつけようとしています。

ですが、うまくつかないようですね。

何度もライターをすっています。

そんなにむきにならなくていいと思うのですが・・・

あ、つきました。でも火の勢いが・・・

ああ! ダメですよ御堂さん!!

いくら熱いからって桶の中に手を入れたら!!

火が消えたのはよかったですが、これじゃあ・・・・・・

桶の中にはたくさんのお線香が浮かんでいます。

どう見ても使い物になるとは思えません。

ご主人様、あまり怒らないで上げてくださいね。

御堂さんも悪気があったわけではありませんから。

どうにかその場は御堂さんが買い直してくるということで落ち着きました。

お水はひなたちゃんが汲み直してくるようです。

でもひなたちゃん、お墓で走っちゃダメよ。

お墓で転ぶと不幸になるって言われているんだから。



二人の背中を見送りながら、とばりさんも呆れ顔。

本当に、みなさんがそろうと賑やかですね。

できることならば、わたしもこの中の一員になりたかったです。

きっととばりさんや美和さんともお友達になれたでしょうに。

ですがそれはかなうことのない儚い願い。

ならばせめて、もう一つの願いだけは・・・・・・

不意にご主人様が、わたしの方を向きました。

釣られて私もご主人様の顔を見上げます。

視線が交差した瞬間、わたしは理解しました。

ご主人様が見ていたのは『わたしの方』ではなく・・・

ご主人様、どうして・・・?

どうして『わたし』を見ているのですか?

わたしは見えないはずなのに・・・

ご主人様の唇がわずかに動きました。

紡がれた言葉は『さち』

ドクン、と心臓が跳ね上がるような衝撃が体を走りました。

と同時に、涙が溢れて止まらなくなってしまいました。

ご主人様にわたしの想いが届いた。

そう考えるのは傲慢でしょうか?

ならきっと、神様が届けてくださったのですね。

なにしてるの?と問うてきたとばりさんに、自分でもわからないと首をかしげるご主人様。

そんなご主人様を見ながら、わたしは、一番欲しいプレゼントを神様におねだりしました。

『どうかいつまでもご主人様が幸せでありますように・・・・・・』





 FIN





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<あとがき>

ど〜もご機嫌ようです。
さち! お誕生日おめでと〜♪企画『Very Happy Birthday』
楽しんでいただけましたでしょうか?
今回はお誕生日ネタですが『全力で祝う会』シリーズではありません。
さすがの彼らでも今回は無理ですからw
彼らには次回、三度頑張ってもらいましょうウフフフフ♪w

それにしても、自分がこの類のストーリーを書く場合、
ラストがどうにも似たり寄ったりですね。
もうちょっと変化つけられないかなぁ・・・?
・・・ここが限界ですかね?

以上、ネタも尽きてきたのでそろそろ潮時か?と考え始めているMでした♪
でわでわ〜♪

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